読みました。「天才音楽家たちの友情記念帳」

天才音楽家たちの友情記念帳 (講談社選書メチエ)
伊東 辰彦
講談社


捨ててしまったと思うけど、小学校の卒業式の日あるいはその前日ぐらいに、クラス内でノート回しが流行っていました。友達帳という名前だったか、何だったか忘れたけど、名前とプロフィール、持ち主に対するメッセージを添えて、分かれても友達でいようね、といった記録。
男子よりは女子で流行っていたように思います。カラフルなのや絵を描いているようなもの。
どうしてそんな行為が流行ったのかは良くわかりませんが、別れの際に一言メッセージを色紙に書いて花束と共に贈る、といった行為は会社の中でも行われていますね。

似たようなことがドイツでも行われていたようです。色紙ではなく、小学校卒業時の友達帳のほうですけど。別れ行く友人のために、記念帳に記念するという習慣があったそうです。その記入者には音楽家もいたので、音楽家の書いた記念帳を調べることでその音楽家あるいは音楽家を取り巻く人たちとの関わりが見えてくるようになります。音楽史の一環として、音楽家たちの交友というのは面白い側面です。まだまだこの方面の研究は進んではいないようですが、面白く読めました。ただし音楽史についてそれなりに基礎知識がないとつらいかも。短い曲を記念帳に記述する例もあるので(音楽家ならではですね)、思いもかけない未発見の曲が見つかるかもしれません。
本書はこの研究ではまだ取っ掛かり、という感が否めませんが、今後面白い発展がありそうに思いました。