今日読んだ本

指揮者の仕事術 (光文社新書)
伊東 乾
光文社

著者の伊東 乾氏はtwitterでも積極的に発言している人で、私はフォローしているので、本書が出たとき、読もうと思っていましたがなかなか読めないでいました。たまたま今日は調子が悪くて会社を休み、午後になって調子が戻ってきたので寝ながら本書を読むことができました。指揮者の仕事というのはオーケストラによって音楽を作ることですが、その実際は棒を振ることではなく、楽団員に演奏の道筋を示すことであり、マネージメントすることでもあります。楽団間の調整なども仕事の一環でしょう。100人もの団員を纏め上げるのは大変です。音楽の知識だけでは(それはとても重要なのですが)指揮者になれない。
本書は指揮者であり作曲家である著者の初めての音楽が主題の本であり、新書ということもあって読みやすくまとまっています。
 指揮をするときどう始めるか、というのは見過ごされやすいのですが(本書でも説明しようとしているがちょっと不足していると感じます)、どれだけの長さを用意に使うか、というのがあります。
 学校で合唱するとき、4拍子の曲であれば4拍、3拍子であれば3拍、つまり1小節をふってから曲が入るのが多いでしょう。「イチ、ニー、サン、はいっ」という感じです。ブラスバンドであれば、2泊が多いかな。「サン、はいっ」です。ところがプロや大学オケになると、「はいっ」だけで入ります。これは楽団に集中することを要求するのですが、指揮者は実は「はいっ」と言う前に頭の中で拍をとっています。楽団員を見渡しながら頭の中で「イチ、ニー、サン、シッ」。そして表に出すのは最後の「シッ」だけです。それで楽団員全員がテンポを理解する。理解できなければいけない。これが難しいと思います。
本書の後半で、劇場での響きについても書かれています。「トリスタンとイゾルデ」が引き合いに出されていて、3次元的な響きは、録音では再現できない、と言う話がありました。私は今後はどうだろう?という気になりました。DVDで5.1チャンネルになり、後ろからも音が聞こえるようになりました。今はブルーレイで7.1チャンネルでさらによくなりました。次世代では11チャンネルになるでしょう。上下左右と中央と言う感じで、360度の方向から音が聞こえるようになる。そうなると劇場での臨場感が自宅でも味わえるようになるだろうと創造します。あるいはステレオヘッドフォンでも立体音響として空間を感じるような録音(バイノーラルとかホロフォニクス)で再生できるようになっています。こうした録音技術で劇場の臨場感を感じることができるようになるでしょう。
ただし、実際の劇場で感じられる、観客側からの反応による音の変化と言うものにはならないでしょうけど。その場にいないと感じられないものは残ると思います。
それでも、バイノーラル録音で劇場での演奏を録音した、と言う音源はこれから出てくるんじゃないかと思います。
 音楽好きには読んでみたい本のひとつですね。