「国民一人あたり実質GDP」vs「労働者一人あたり実質GDP」
経済指標のひとつとして「一人当たりGDP」というのがあります。中国のGDPが日本を抜いて世界2位の経済大国となりましたが、それにもかかわらず日本から援助をしています。実際のところ、中国の地方は相変わらず貧しいままです。中国は国土が広く、人も多いので、国家総体としてのGDPは大きいのですが、一人当たりに直すと、まだまだ貧しいといえます。
そこで、ある国の生活水準を示す指標として「一人当たりGDP」です。これはGDPを人口で割ったものです。さらに「一人当たり実質GDP」というのは一人当たりGDPを物価で割ったものです。
この小黒氏の記事で説明されている「労働者一人当たり実質GDP」というのは国の総人口ではなく、労働人口で割ったものです。ところで、総人口は労働人口+非労働人口です。
式にすると、
一人当たり実質GDP = 実質GDP÷総人口
労働者一人当たり実質GDP=実質GDP÷労働人口
です。ここで労働者一人当たり実質GDP÷一人当たり実質GDPを計算すると、
(実質GDP/労働人口)/(実質GDP/総人口)=総人口/労働人口
となります。これは何か、というとGDPが同じならば、労働人口が少ないほど一人当たり実質GDPが大きくなる、ということを示しています。
GDPは労働人口による生産の総量ですから、ひとり当たり実質GDPをあげて結果的にGDPを増やすか、労働人口を増やしてGDPを増やすかにかかっています。
小黒氏が結論的に書かれている
他方、いわゆる「成長」という意味では、供給側の「労働者一人あたり実質GDP」を用いる方が適切であろう。
ということですが単なるGDPが増えれば経済が成長している、ということを言い直しているだけに思えます。若年齢層が減少し、国民の労働者人口比率が減少すると、労働者一人当たり実質GDPが増えない限り、GDPは減少します。すなわち将来日本のGDPは減少する、という話です。
なので定年の年齢を引き上げるとか、出産後の女性の労働への参加を促すとかといった政策が必要だ、ということになるのでしょう。
小黒氏の記事で「労働者一人当たり実質GDP」という指標を提案しているわけですが、実質GDP÷労働人口という計算方法だけでなく、別な方面から労働者一人当たり実質GDPを計算する方法を考えない限り、あまり意味があるようには思えないですね。別な方面というのはどうやったら労働者一人当たり実質GDPをあげることが出来るのか、ということですが。その方法を議論することで、経済発展が進むだろう、というのが主旨なのかもしれません。