移動ドと固定ド唱法について

私はツイッターをはじめたのだけど、移動ドと固定ドについて議論が行われています。

どういう流れになっているのかつかみ辛いところがあるのですが、誰かまとめてくれないかなぁ。

移動ドというのは、楽譜を読むとき(主に声楽かソロ楽器)、調性を意識して、ドの音を移動して歌う唱法で、逆に固定ドというのはドレミ・・・を移動させない唱法です。
固定ドは音そのものの高さを意識するのに対し、移動ドは旋律や音楽の流れを重視した唱法といえるでしょう。この唱法は楽譜の読み方でもあります。器楽をやっている人は、固定ドで読む人が多いと思います。声楽は移動ドが多いかも。統計情報を見たわけじゃないので感覚的な話ですけど。

ところが、音楽の勉強である楽典では、音の名前について2種類の言い方があります。「音名」と「階名」です。音名とは音の高さそのものに対しての名前で、階名とは音階の名前です。ある調があったときに、その主音を長調ならド短調ならラとして音をとる方法です。
楽典では、音名には「イロハニホヘト」を使い、階名には「ドレミファソラシ」を使うことになっています。
楽典からいうと、「移動ド」唱法は間違いになります。音そのもの名前で歌うのならば、音名での唱法となり、「イロハ」で歌うべきです。

実際には出来ていないでしょう。日本の音楽教育において、学習指導では「移動ド」で教えるようになっているそうです。どういうことかというと、「ドレミファソ」で読ませ、調号が付いて調が変わったら(ヘ長調など)、その調にあわせてドレミファ・・・を移動させるように教えます。はじめは調号のないハ長調から始めますので、ハ長調での読み方が楽譜上の音と関連付けられるでしょう。固定ド唱法はこのドレミの読み方そのままなので簡単です。器楽の練習も、ハ長調から始まり、段々調号を増やすものです。ハ長調で楽譜を読み、その音を楽器で出します。音の高さと楽器の指使いと読み方が頭の中で関連付けられます。ハ長調が出来て、ハ長調の階名よみである「ドレミファ・・・」と指が関連付けられてから、次の調で新しくドレミファの音と指を関連付けるのは難しい。せっかくの楽譜の読み方と、指使いとの関連が壊れてしまう。初めから音名で(ハニホヘト・・・)で読んでいればいいのでしょうけど、ドレミ・・・の読み方は圧倒的に広まっていて「ハニホ・・・」の読み方は楽典で調を調べる(ハ長調とかロ短調とか)ときにだけにしか使わなくなっているようです。
声楽だと、移動ドで読むほうがいい。「ドレミファソラシド」という音程の感覚はハ長調でもト長調でもロ長調でも変わりませんから。旋律を覚えやすいのは移動ドでしょう。

移動ドのほうが音楽の勉強としては優位性があるように思いますが、簡便さという点で固定ドの方が優位です。曲の途中で転調すると、それまでドだったのがソに変わるのですから。
そして、音楽の教育として固定ドで教える先生が後を絶たないと思われます。なんといっても音楽で大事なのは音楽の作り方であって、読み方は重要ではないからです。また良かれ悪しかれ、音楽の世界は徒弟制が息づくところです。移動ドで教えられてきたら生徒にも移動ドで教えるでしょう。

移動ドではなく音名で教えているのだから「ハニホ・・・」で教えるようになれば問題はなくなると思うのですけど、徒弟制のつよい音楽業界では長い時間をかけないと実現できないことだろうと思います。