読書と音楽

読書というのは音楽を聴くのに似ている。

いや、音楽を聴くのが、読書に似ている。
しかし悲しいかな、初めて聴く曲で、覚えられるモチーフなど
ほんの少しだ。小説を読むのに小説のモチーフは簡単に覚え
られるのに。

私が読む本は小説が多いのだが、ほとんどの場合、一度しか
読まない。今まで何百冊と読んだので、内容を忘れているのが
多いはずだが、たいていの場合、読み返すとそれなりに話を
思い出す。私の場合、話のわかっている本は読む気がしない。

音楽は違う。

初めて聴く曲であれば、そしてそれが特に演奏会であれば、
まず間違いなく眠ってしまう。
音楽モチーフの記憶力が弱いのだ。たかだか10分から20分
ぐらいの曲でさえ、私を眠りの世界へ誘う。
だから私は同じ曲を何回も聴く。楽譜が入手できるなら楽譜を
読む。楽譜を見ながら曲を聴く。
そして、曲の始めに提示されるモチーフが変形されたり、再現されたり、隠れたりしているのを発見して感動する。
音の一つ一つに意味があるのを発見するのだ。いや、音に意味があるかのようにだまされているのかもしれない。

小説だと読むのはストーリーを追うことで、構成とかそういう部分に目がいかない。単に楽しんでいるだけ。

こういう楽しみ方ができれば音楽も眠らずに聴けるかもしれない。