手書きの楽譜

IMSLPという著作権の切れた楽譜あるいは作曲者自身が了承した楽譜を公開しているサイトがあります。4万曲近い楽譜が入手できるすばらしいサイトです。私もここを利用して、バロック時代の楽譜を入手して練習するなどしています。
バロック時代は印刷はありましたけど、銅板印刷なので、手書きによる版下作成によっています。したがって楽譜は清書していますけど基本手書きです。
また印刷物は高いので、自分で写譜して利用することも多かったと思われます。
こういった楽譜を見ると、現代の楽譜と違って、楽譜の縦の線が一致していないことがあります。少々のずれなら手書きなので当然ですが、あれ?と思うものがありました。
4分の4拍子の同じ小節内で、2分音符+全音符+2分音符が3等分の位置関係に配置されていました。一瞬、「?」となるわけです。要は全音符が鳴っている上に2分音符が2泊ずつで鳴るのですが、左から音楽が流れている中で、2分音符が来てから全音符が来ると混乱するわけです。
当時の人たちは混乱しなかったのでしょうか?
音楽史的に考えると、当時はポリフォニックで多声部がそれぞれ独立した旋律を奏でる音楽から旋律と伴奏というホモフォニックな音楽への過渡期といえるでしょう。
多声部の楽譜を読むのが音楽家として当然の技術であるなら、上下にある音符はそれぞれ別個の声部として読むことも普通であったわけで、全音符は小節の真ん中に位置し、早い音符で小節の幅の大部分を占めてしまったとしても、それほどの不便は感じなかったのかもしれません。
現代の楽譜は、音符の小節に閉める幅と、音符の音の長さについては関連が見られます。つまり4分の4拍子であれば、4分音符は小節の4分の1の幅を占める。16分音符が並ぶと融通を利かせて幅が少々広がりますが、それでも16分音符が4つ並んだ幅で、大体小節の4分の1になるように清書しています。

これは写譜屋さんの技術の向上もあるでしょうけど、音楽のありようがホモフォニックになり、音の縦の線が重要と思われるようになったからではないでしょうか。

各時代の楽譜における、音符が占める幅の移り変わりを調べると面白い結果がでそうですね。