ワクチンの効果を考えてみる

NATROMさんの、NATROMの日記から。

引用:

インフルエンザワクチンの効果に否定的な主張はよくあるが、これまでに見たことのないパターンのものを見つけたhttp://miyatak.iza.ne.jp/blog/entry/1192887/allcmt/#C1276850 href="http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090925#20090925f1" name=20090925fn1>*1。要約すれば以下のようになる。

カナダの21の病院でのデータでは、インフルエンザの患者さん(成人)のうち、71%はインフルエンザのワクチンを接種していた。これではワクチンに予防効果があるとは言えない。

さて、問題。Q.上記のデータからインフルエンザワクチンの予防効果の有無について判断できるか?

 

判断するには材料が少ないのですが、この内容からワクチンの効果はない、と思う理由を考えてみたいと思います。

例えば、90%の効果があるワクチンがあるとします(つまり1割の人が病気にかかる)。10000人のうち、1000人が病原菌にやられる、としましょう。ワクチンをしていない通常の人の場合でもたいりょくがあるので、50%の確率で病気になると仮定します。半数の人がワクチンをしているとすると、ワクチンなしの500人とワクチンありの500人がいます。すると病気になったのはワクチンなし250人とワクチンをした50人になります。病気になった人のうちのワクチンをした人の割合は、
 50÷(250+50)
で約16.7%です。ワクチンの接種率が上がって、9割の人がワクチンを接種したとしましょう。1000人のうちワクチンを接種した人が900人で100人がワクチンなしですから100×0.5=50人と900×0.1=90人 で、140人が病気になります。ワクチン接種の人の割合は
 90÷(50+90)
で約64.2%です。ワクチンをするほど病気になる人の中のワクチン接種の人の割合が増えるのだから、ワクチンは効果がない! ということになります。

どこがおかしいのでしょう?

割合を求める母数が問題なのです。病原菌にかかるのが1000人なのですから、母数は1000とするべきなのです。すると、ワクチンをすることによって、誰もワクチンをしないときの病気になる人数500人から全員がワクチンをした場合の100人に病気になる人が減り、効果があることが分かります。最初の問題では、どれだけの人が病原菌にかかったのかが不明です。調べるなら、ワクチンをしていない集団と比べて、どれだけ病気の人数がいるのか、を比較しないといけません。

しかし病気にかかる可能性のある人数というのは分かりませんから、実際に病気にかかった人の人数、つまりワクチンの効果のなかった人やワクチンをしなかった人が病院に来るわけです。病気にかかった人の中で割合を考えてしまうと、間違った認識(ワクチンに効果はない)と考えてしまうでしょう。