スポーツ指導者って、語呂あわせが好きなんだろうな

スポーツ指導者は、選手を成長させるのが目的です。勝利へ導くというのはその手段です。勝利すること、勝利に至るプロセスによって、また勝利できなくてもそこから反省することによって、人間的な成長を促す、というのがスポーツ指導の本来の目的でしょう。
指導のプロセスの中で、選手に集中力を持たせるというのは重要です。集中力を高めるいろいろな方法のなかで、語呂合わせというのもあります。
受験勉強で暗記物にたいして語呂あわせで覚える、というのがあります。スポーツでも覚えなければいけないことは語呂合わせで覚えるのは有効な手段でしょう。
そうすると、覚えさせたいことのための語呂合わせなのに、意味をもたせようと勘違いする人もいます。
とくに、経営コンサルタントという人はスポーツ指導者に傾倒しているような人もいるみたいで、こんなコラムを書いている人がいました。

One for All , All for One の誤訳

Faith総研というコンサルタント会社の社長のコラムです。簡単にまとめると、次のようになるでしょう。

ラグビー指導者として有名な平尾誠二氏の言葉として、「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン」の訳(「一人はみんなのために、みんなは一人のために。」ラグビーに限らず、チームプレイが重要なスポーツではチームプレイの大切さのためにこの言葉を用いているところは多いでしょう。)は間違っているそうです。「オール・フォー・ワン」のワンは勝利(Won)の意味だ、というのです。
一人ひとりが自立し、勝利のために全力を尽くせ、チームの一員として他のメンバーに甘えるな。自立して、個々がそれぞれ勝利へ向かい、その相乗効果を発揮させて「勝利」を掴もう。


本意は、個人の自立を促すものですが、引用している「オール・フォー・ワン」を「みんなは勝利のために」という訳は単なる語呂合わせです。そんな翻訳は成り立ちません。

指導者として勝利を目指すため、平尾氏はそれまでチームプレイのための「みんなは一人のために」でなぁなぁになっていたチームの選手に対し、喝を入れるために、ワン(One)をワン(Won)として語呂あわせを使ってより印象深くさせた、というのが真相でしょう。

ところがこのコラムの著者は調べることもせず、有名な平尾氏の言葉だから、というだけで引用しているようです。
この有名な言葉は、三銃士の中のせりふで、英訳については次のサイトで読むことができました。
The Three Musketeers/Chapter 9
ここの最後のほうに、こうあります。
"And now, gentlemen," said d'Artagnan, without stopping to explain his conduct to Porthos, "All for one, one for all--that is our motto, is it not?"

平尾氏が本当に『「みんなは勝利のために」の誤訳』だ、と思っていたかどうかは分かりませんけど、語呂あわせが好きなスポーツ指導者は多いんじゃないかな、と思います。

コンサルタントは「~のことば」として自分の無知の責任を逃れようとしているんじゃないかな。この人は本も出しているみたいだけど、三銃士のような古典を知らないのは驚きです。

そうそう、「三銃士」は子供名作全集で小学生のときに読みました。
小倉氏も子供名作全集でも読んだらいかがでしょう。古典名作のあらすじや登場人物ぐらいは知っているのが普通(というか知らないで書けるってすごいですね)だと思います。講演もされるようなので、講演会で古典を知らない無教養な人、と思われないためにも。