夏目漱石「こころ」読中→読了

私は小学生のころから、国語の教科書は嫌いではなかった。むしろ好きだった、といってよい。
読書が結構好きだったから、よい文章を集めている国語の教科書が面白いのも道理。

授業として「主人公の気持ちは」とか「~の中の"これ"とは何か?」とかいったことはどうでもいいが、読んだ内容についてはそれなりに覚えている。
あるいは、一度読んだものを再読すると、記憶が蘇ってくる。

夏目漱石の文章は中学か高校で読むと思うけど、私が使っていた教科書に「こころ」は載っていなかった。Wikipedeiaで夏目漱石を調べたが、多分「坊ちゃん」が使われていたような気がする。とりあえず「こころ」ではない。

で、「こころ」なのだが、購入していない。無料で読めるというサイトからダウンロードして、携帯の中に保存してある。時々電車の中で読んでいる。

明治のころの文章なのだが文語体にはなっていない。それでも現代の小説に比べると漢字が多い。読めない漢字もあるが、なんとなく読めるものだ。
「伽藍堂のわが家」「絵端書」とかそういったものだが、なんとなく時代を感じる。
時代を感じるといえば、その内容である。まだ3分の1ほどしか進んでいないが、主人公である「自分」が卒業論文を4月に提出し、6月に卒業している。9月が新学期の始まりである。日本の教育が4月始まりになったのは戦後であることを思い出させられた。
当時の風習なのか、6月に卒業して、それから就職先を探すものだったようだ。「自分」の友人の中には就職先(教師みたいだが)を学生のときから探していたような人もいたようではあるが。

この頃の文学は現代文の教科書に使われるように、「現代の」日本語ではある。ただしかかれている状況が100年も前のこと。一種のカルチャーショックのようなものを感じる。そこに書かれているのは湘南であったり、根津であったりするが自分の知っている湘南や根津ではない。
お手伝いさんも普通にいるし、文学としてではなく、当時の風習を垣間見る、というところで面白い。

小説としては・・・、まだ読み終わっていないけど、展開が遅いですね。それがまた時代を感じるところですが。

蟹工船はまだ読んでいない。読むかどうかは微妙。読みたい、という気には今のところなっていないな。

7/19 やっと読了。先生からの手紙を読み進めると、こころが三角関係の話だったことに気が付く。そしてこのモチーフが後に出てきたたくさんの三角関係を扱った作品に大きい影響を与えていることも。考えさせられる点では良い本でしょう。どうして私は先生にひかれたのか、先生はなぜ私に親切にするのか、奥さんの言動の描き方はどうか、Kについての描写はどうか。私の父親のいまわの際に家を出てしまう私。
読んだ人によっていろいろ感じるところがあるだろう、というところが文学たる所以か。読んでおいて損はないか。